lapinchicの日記

色々思うままに書いていきます。

I LOVE HER

恋はいつ生まれる?
=後世に残したい少女マンガ100選=

ひさびさに読んだ。いくえみ綾で一番好きなのは、この作品だったりする。とはいっても、ほかに読んだことのある作品は、さほど多くなく「POPS」、「愛があればいーのだ」、「子供の庭」くらいだ。
この「I LOVE HER」は、とても大好きで、私が人生で出会った漫画のベスト100に軽く入る。

ストーリーは、高校生の花が親の離婚で引越し、転校することになり、母と住むことになったアパートの隣人で自分の担任になる男、数学教師の新ちゃんに出会って恋をし、成就するまでを描いた恋愛もの。

ちなみに「I LOVE HER」という題名のビートルズの曲があるらしい。そこからタイトル取ったのだろうか?    

少女漫画で恋愛ものは鉄板。しかも学園ものの恋愛漫画なんて、きっと鬼のように沢山読んできているはず。しかし、この漫画と比較してみようと、恋愛ものの漫画を思い浮かべた時に何も思い浮かばない・・。
これは一体、どういうことだろうか?案外、ザ・学園もの!の恋愛漫画で、印象に残る作品は少ないのかもしれない。ホットロードなんかは、学校行ってるか不明だしなぁ・・、いたずらなキスは面白い、ほか何かあるかなぁ・・。

この作品は、さすがいくえみ綾!と思わせる、心理描写と会話、人物描写などのリアリティが優れており、旧来の少女漫画から脱皮したセンスに溢れていて、発売してからなんと20年!も経っているのに、ちっとも古さがない。さすが今でも映画化されるヒット作を生み出すだけある(潔く柔く)。

この作品を読んで思うことは、人を好きになるのは理屈じゃないということ。
例えば○○なところが好きだからとか、○○なことがあって、○○な風にいいと思ったとか、そうやって説明するようなことは嘘か後付けで、少しの関わりでも恋心が生まれ、なんとなく惹かれる、そういうものなのだと思う。
そう考えると、努力して好きになろうとしたり、上手くいくよう我慢したり、頑張りを要求する男女関係は大間違いということなのかもしれない。
本当に好きな人には、一緒にいるだけで幸せだし、あるがままの相手を受け入れやすいものだ。

この作品には劇的でドラマティックな演出はない。恋をすると、相手の気持ちを感じる感性のアンテナが鋭くなり、なんてことはないように見える会話の中にも、もしかして?と期待したり、落ち込んだり、気持ちの浮き沈みが激しくなる。恋をすると相手との関わり全てがドラマチックなのだ。

花は自分の気持ちに素直に向き合い、新ちゃんに惹かれるままにドギマギし、浮き沈みしながら過ごす。
新ちゃんは教師という立場もあってか(それだけじゃないと思うけど・・)、花への気持ちを抑え、なかなか簡単には進まない。
新ちゃん待ちで進展せず、花は自分に対して新ちゃんが作る壁にずいぶん苦しむけれど、新ちゃんが折れて、晴れて両想いになる。

思えば世の中には色んな男女関係があるだろう。簡単に付き合いだす間柄も少なくない。
しかし本当に好きな人ほど、なにか怖さを感じたりする場合も多いと思うし、相手が怖がって前に進まない場合もある。
だけど時間はかかっても、関わりの中から感情を育ていく関係は、長くかかった分、相手への信頼や感情を強く持つ太い幹に育つ気がする。真っ直ぐに育てていくなら、簡単でなくても悪いことじゃないのだ。

またライバルの同級生、艶香との関係が面白い。艶香に対しても新ちゃんは、かなり期待させることをしており、艶香目線からしたら、花がいなければ、それで1本艶香目線の作品が出来そうなくらいだ。後から来た花に奪われて、気の毒ではある。
家庭環境は、離婚し母子家庭で母親が夜の仕事でアパート住まいの花のほうが家庭環境問題あると一般的には判断されると思うけれど、本人の資質で全く問題にせず、友達も多く元気な花と、お金持ちのお嬢様だが親とのコミュニケーション不足に育ち、人間関係が苦手で孤独な艶香、というのも面白い。

あとこの漫画、時間進行によって、髪も伸びたり、切ったりと芸が細かい。
潔く柔く」も映画化されたし、最近のいくえみ綾の作品も読んでみたくなった。なにかいいのに出会えるといいけれど。