lapinchicの日記

色々思うままに書いていきます。

柏木ハルコ「失恋日記」

失恋日記 (FEEL COMICS)

失恋日記 (FEEL COMICS)

 

 ひさびさに短編集で面白いと思った。柏木ハルコは「いぬ」を読んだことがある。女の子のあまり見つめたくない性への自意識を取り上げていて、ちょっと違う視点におおっと思う作家ではあったけど、やっぱり一味違うネームをあげてくる。

最初に出てくる短編、「別れる」は、吉井くんの顔からして普通じゃないけど、交際に至るアプローチも変わってて、柏木ハルコ的くせのある二人なんだけど、上手くいかなくなって、振られそうになって、自分の中の執着に苦しみ、戦う感じは割と一般的な心理で共感できる。
好きという感情と合わないいられないとのせめぎ合い、カップルって100%嫌いで別れるわけじゃないんだろうな、そういう別れ際の感じがよく出てる短編。

次の「DIARY」はヒロインの性へのお下劣感が柏木ハルコっぽいキャラなのだけど、その内面のを吐露した漫画で、お馬鹿に見えるキャラが、じつは色々ごちゃごちゃ考えていて繊細だったという重い漫画。

「夫の片思い」。これが一番普通で、かつ内容もよく、共感で出来るところがいっぱいでよかった。友達夫婦が夫に好きな人が出来て、揺れるの話。
一番胸に来たセリフが「心の中に大切にしたい宝物がある そのことそのものが幸せなのだ・・と」のところ。
短い話なのに設定が細かくて、すごいなあ。好きになったのは年上の40女で、生活感のあるキャラだったとかね。

「裸のえろ」。これが一番柏木ハルコらしい話だと思う。犬猫のように性に関して動物的なえろ。「いぬ」で性への罪悪感、自意識を描いた作者ならではのキャラだと思う。羞恥を見せず、直情的なえろは「いぬ」と対極のように見えるが、現実感のない極端さが性への意識過剰さを感じ、いぬと延長線上の世界にあると感じる。
柏木ハルコはエロ漫画が多いけど、千葉有数の進学校から、国立大学とのインテリ漫画家で、優等生ならではの性への向き合い方をひたすら追求しているような感じで、読んでて照れるというか疲れるというか、そういうところもあり、嫌いな人もいると思うけど、内容はしっかりしていて、読ませる作家だなと思う。なにかひとつ突き抜けたら、ブレイクしそうな感じなのだけど。短編集で、これだけ読ませるのはすごい力量だと思う。期待。